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書名 虐殺器官
著者名 伊藤計劃
分野 小説
紹介文  『虐殺器官』の内容を一言で表すとすれば「罪と罰」ではないだろうか。
 クラヴィス・シェパードはときどき死者の国を夢見る。自分の罪は何か、その罰は何処にあるのか、そして自分の意思とは…。答えを、拠り所を探していた…。
9・11以降、先進諸国はあらゆる情報を徹底的な管理体制下に置き、“テロ”という脅威を一掃した。対し、後進諸国はテロが拡大し大量虐殺等が加速する一方であった。あるとき、自国の力だけで治安を立て直した国が存在した。その国は治安の回復を他国にアピールするため、有名な広告コンサルタントを雇う。すべては順調、良き未来に向けて歩き出したかに見えた。しかし、その国はまた急激な治安悪化を繰り返すこととなる…。
 米軍大尉クラヴィス・シェパードと所属部隊はその元凶となる2名の暗殺を謀る。そのうちの1名はすでに逃走。その1名―ジョン・ポールは後進諸国のテロ拡大の陰に常に存在していた。そこでクラヴィスらはジョン・ポールを追うこととなるのだが…。内戦の原因は…、ジョン・ポールとは…。そして、虐殺を繰り広げる器官―虐殺器官とは何なのか。人それぞれが考える罪と罰、想いのあり方が交錯し合っていく――。
 
 私たちの身近にも「罪と罰」は潜んでいるのではないだろうか。教育における体罰、介護や育児における虐待、貧困における犯罪…等々。最初の目的は国民や相手等を想いやる善意から。しかし、気付けば善意という名の悪にすり替わっている。それは当人も気付かないほど鮮やかで流動的に。何が罪で誰がどのような形でなら罰になるのか。
 また、罪と罰はそのままの意味だけではない。そのなかに含有されるものには「善と悪」「自由と安全」がある。先ほどの善から悪への流動的な移行も罪と罰以外に「善と悪」が潜んでいる。「自由と安全」はある自由を捨てる代わりにある自由を得る。そう、安全という自由を得るのだ。そして、そこにある罪と罰のあり方もまたその自由のなかで変わってくる。…と自分は本書を読んで思った。
 伊藤氏の作品は様々な問題を『虐殺器官』という作品に散りばめている。その問題にぶち当たったとき、どう考え、どう行動するのか。改めて「罪と罰」について問われているように感じる。そして考えさせられる、そんな作品である。



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