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紹介者 岩本一郎先生
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書名 精霊の守り人
著者名 上橋菜穂子
分野 日本文学
書評 (再掲載:2008年3月掲載) 
 子どもが読んでおもしろい本は、大人が読んでもおもしろい。あさのあつこ『バッテリー』(角川文庫)しかり、はやみねかおる『名探偵夢水清志郎事件ノート』(講談社文庫)しかりです。そして、今回のお勧めの一冊、上橋菜穂子さんの『精霊の守り人』(新潮文庫・2007年)もそうです。
 新ヨゴ皇国の帝がはなった刺客と異界の魔物から、皇子チャグムを命がけで守る用心棒バルサの活躍が、物語の縦糸。そして、かつてない日照りに干上がりかけた皇国に恵みの雨をもたらそうとする星読博士と呪術師の奮闘が、物語の横糸です。チャグムが宿した「精霊の卵」が、物語の中心にあります。話しが進むにつれ、この精霊の卵を無事に孵さないかぎり、日照りはやまないということがわかってきます。その手がかりは、皇国の建国伝説と先住民のヤクーの伝承にあるらしい。しかし、伝説は書き換えられ、伝承は忘れられかけています。はたしてバルサは、チャグムを守り抜き、星読博士と呪術師は、精霊の卵を孵す方法を見つけることができるのでしょうか。
 為政者は、歴史をねつ造する誘惑から逃れがたいこと。私たちの生きる世界を一つの文化によって一様に塗りこめることの愚かさ。多様な文化的な視点を重ね合わせることで、はじめて世界の真の姿が浮かび上がってくること。そして、世界の境界に生きるものの知恵こそ、ときに世界を変える大きな力になること。そんな上橋さんのメッセージが、物語から静かに伝わってきます。



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