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書名 遠来の客(「過越しの祭」に収録されています。)
著者名 米谷ふみ子
分野 日本文学
書評 (再掲載:2006年10月掲載)
 著者は1960年代にアメリカへ渡った女流作家・画家である。「遠来の客」は、ユダヤ人の夫との日常、障害児を持つ子どものケア、アメリカで暮らす日本人の心模様等が丁寧に描かれた短編である。施設へ入所した13才の息子ケンを週末に迎えに行くところから物語は始まる。息子の帰省、団欒にはならない食事、夫との確執等々は、どこにでもあるような風景でありながらも、それが「美化」されずに描かれている点が新鮮である。
 ケンが食事をした後には、コップやクロスまでがマヨネーズに染まっている。ケンは父や兄をひっかき、ドライブが中断される。ケンの接し方をめぐり夫婦は激しく言い争う。入所施設からの初めての帰省を母親は「いそいそした」気分で迎えたというが、父親はそうした母親の態度が「いらいらしていた」ように見え、非難する。
 そして、ケンが施設へ戻ると、家族の生活は「凪」となるが、いるべき人がいない喪失感は拭えない。「一緒にいればむずかしく 一緒にいなければ家族の一員が欠けている」という思いを一生涯持ち続けることを母親は吐露する。家族の絆とか、愛情という表現ではなく、呵責の念や後悔の言葉の中で、家族はケンの存在を再確認していく。いつもそこにいるのではなく、興奮、華やぎ、あわただしさを道連れにやってくるケンは、「遠来の客」になってしまうことを夫婦は静かに受容するようである。
 表題作の「過越しの祭」は芥川賞受賞作である。ケンを施設に入れた一家が何年ぶりかの休暇と称して、夫の家族を訪問する。熱心なユダヤ教徒である夫の家族から疎外される妻の内面が描かれ、こちらの作品も面白い。



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