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書名 動的平衡 : 生命はなぜそこに宿るのか
著者名 福岡伸一
分野 生物科学
書評  「動的平衡」とは、一見すると矛盾する言葉の組合せのように感じます。なぜなら「動的」とはダイナミクスであり、「平衡」とはバランスであるため、動と静をイメージする言葉を並列すると、言葉の意味が取り難くなるからです。しかし、本文を読み進めていくと、筆者がなぜ生命は動的な平衡状態にあると言っているかに、合点がいきます。例えば、私たちは生きている限り食物を摂取し、それが分解されあらゆる細胞の中身が更新されています。しかし、見た目が大幅に変化し、別人になることはありません。まさに、細胞レベルでは生きている限り多くの更新があることから「動的」でありながらも、見た目が全くの別人になるような変化はない「平衡」を保っているのです。また、なぜ人は同じ1年の長さが、3歳の時と30歳のときでは違うように感じるのかについても、動的平衡で説明がつきます。3歳の時は1年が長く充実したもののように感じていましたが、30歳の時では1年が瞬く間に過ぎていくように感じます。これには「体内時計」が関連しています。体内時計の秒針は、たんぱく質の新陳代謝速度であり、その新陳代謝が加齢とともに遅くなっていく、つまり体内時計が徐々にゆっくりと回るようになるため、年を取るにつれて1年の感覚が短くなっていくと筆者は説明しています。
 このように純粋な生命科学の視点のみならず、例えば脚気の治療に失敗した陸軍軍医の森鴎外と、治療に成功した海軍軍医の高木兼寛の歴史的エピソードの紹介や、人間と病原体の闘いやダイエットを科学的に分析するなど、身近な話題も交えて生命科学を分かりやすく解説しています。多岐にわたる題材と多角的な視点から生命の真実に迫った、珠玉の一冊であると言えるでしょう。



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